kariaの日記 @ Alice::Diary

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【敷金返せ!】賃貸住宅退去時に管理会社から請求された19万を半額以下に減額させた話

7年間お世話になった賃貸マンションから退去した。引っ越しのあれこれをなんとか乗り越え、あとは旧居の鍵を返却するだけとなった。

退去立ち会いの当日、部屋の中で突然不動産屋が顔をしかめてこう言った。

「……タバコ吸ってましたか?」

一ミリも心あたりがないので、即刻「1本も吸っていません」「来訪者にも吸わせていません」と抗議したが、1ヶ月後に不動産屋から届いた書面には請求額として「19万9874円」という文字が並んでいた。敷金と家賃の日割返還額は1円も残らず、逆に差額9万円余りを不動産屋に振り込め、というのだ。

あり得ない。絶対に減額させて敷金を取り返してやる。

以下はその戦いの記録である。もし同じように敷金返還時のトラブルに遭っている人の参考になれば幸いだ。

まず相談

不動産屋には電話連絡およびメールでのやり取りを何度かしたが、基本的には「払え」という態度を崩してこない。次の一歩を考える必要がある。

敷金返還についてのトラブルは、インターネット検索でも様々な情報を得ることができるが、人によって(厳密には契約や物件の状況によって)ケースバイケースな事項が多い。また後述するが、不動産屋の提示してきた「19万9874円」という金額の内訳が入り組んでいて、中々説明が難しい。

ここでは私が今回相談先として利用した手段、検討したけど使わなかった手段について述べる。

賃貸ホットライン

まずは専門家であろう東京都の窓口に相談だ!と考え、最初にここに電話した。

リダイヤル2回目ぐらいで繋がった担当者が回答してくれたのだが、かなり態度の大きい担当者が出てきて、ざっくり概要を聞かれただけで「あなたが納得してないんだったら、大家に差額を振り込む必要はないんですよ!」と言われた。本当は敷金返還の可能性なども聞きたかったのだが、踏み込んだ話ができる雰囲気ではなかったので、そこで会話を終えた。

消費生活相談センター

次に東京都の消費生活相談センターにかけてみたが、話し中で繋がらなかった。「確かに相談増えてるという話を聞くしなぁ……」と思って検索してみると、「188」という全国共通の相談番号があることを知った。

www.caa.go.jp

この番号にかけてみると、まず自動応答で郵便番号を入力するよう求められ、その情報を元に地元自治体が運営する消費生活センターに繋がった。この窓口の方が非常に親身になって相談に乗ってくれた。30分ほどの通話で、現在の請求内容について詳細に聞かれたあと、次に取るべきアクションと今後についても詳細にアドバイスをくれた。

注意すべき点としては、この「188」の番号はナビダイヤルという仕組みになっていて、窓口につながった時点から3分90円ほどの通話料金がかかる。私は810円課金されていた。これでも次に紹介する法律相談よりも安いのだが、一般的には各自治体の消費生活センターに直接電話すれば安く上がるはずなので、調べてみてほしい。

法律相談センター

仮に消費生活相談センターでもあまり参考にならなかったら、弁護士さんに相談しようと考えていた。誰に頼んだら良いのかわからないので、弁護士会が運営する法律相談センターに行こうと思っていた。

www.horitsu-sodan.jp

法律相談センターは有料だが、「弁護士に相談した」というのが交渉する上で強いお墨付きになると考えた。法律相談センターの金額は同じ都内でも一律ではなく、錦糸町だけ30分2200円と安く、とりあえず聞いてみようという気持ちになれる金額である。ただここで相談できる弁護士さんは当番制で、Googleの口コミを見ると当たった先生によって評価が分かれるような雰囲気があった。最終的には利用せずに済んだ。

基礎知識の復習

さて、ここからは相談やインターネット検索を得た知識を元に、敷金についての基本的な知識のおさらいしていこう。

どの窓口に相談しても、またいくら検索しても「まずはガイドラインを見ろ」という文字を100万回見ることになると思う。今回のトラブルについてFacebookなどに書き込んだ際も同様のアドバイスを複数いただいた。

敷金返還(賃貸住宅の原状回復)に関するガイドラインは、国土交通省によるものと東京都によるものの2種類がある。

www.mlit.go.jp

www.juutakuseisaku.metro.tokyo.lg.jp

東京都のガイドライン国土交通省のものベースにしてより踏み込んだ内容になっているので、今回の記事では「ガイドライン」と記載した場合は東京都のガイドラインを指すこととする。


まず大前提を確認しよう。

  • 貸主は敷金を返還する義務がある
  • 原状回復の負担は、貸主負担の場合と借主負担の場合があり、ガイドラインでは各種判例を元にした基本ルールが記載されている。
  • 賃貸契約時に、ガイドラインの基本ルールから外れた「特約」を結ぶことが出来る。ただし、特約は内容によっては裁判で無効とされることもある。

大前提として敷金は返還の義務があり、これは民法にも明記されている(2020年施行の改正で載った!)が、それとは別に賃貸契約が終了した際には原状回復(物件を借りた当時の状態に戻すこと)の義務がある。この原状回復の費用の一部(または全部)が借主負担となってしまった場合、借主負担額が敷金として預けていた金額を超え、差額請求が借主に行く可能性はある。敷金以上は請求されずにチャラになる、なんてことは(大家がそれを認めない限りは)ない。

内訳の精査

ここからが消費生活相談センターからのアドバイスを受け実際に実行した内容になる。

管理会社から請求された内容は多岐に渡っていたが、内容により「特約により支払うことが決まっている項目」「金額の根拠が不明瞭であり減額すべき項目」「支払う必要のない項目」に分類・精査した。「支払う必要のない項目」に分類したのは、エアコンのクリーニング費用やクロス(壁紙)の交換に関する費用だ。これらは実際にタバコを吸っていないので、支払う必要がなく0円とした。その他の項目についても支払の必要の有無や金額の妥当性を1個1個精査し、最終的に支払うべき金額の合計を77000円と算定した。

管理会社側の請求額より半額以下となった。これならば、主張が全て認められれば、敷金が全額とはいかないが一部は返還されるはずだ。

※2021/12/25 コメントを受け追記 本節では初稿にて、請求金額の内訳およびそれぞれに対する私の見解を掲載していました。私は契約書・各種ガイドラインを元に可能な範囲で検討を尽くしましたが、それぞれの請求内容が妥当かどうか(特に補修の必要性の有無)については物件によりケースバイケースであること、また私の見解は専門家による監修を受けたわけではないことから、誤解を与えないようこの項目は削除させていただきました。

本記事は、あくまで借主個人の主張のみに基づく事例紹介であることをご理解頂き、個別のケースで判断に迷われた場合は、ご自身で専門家に相談いただくことをお勧めします。

返還要求の送り方

この主張をどのように突きつけるか、そこが消費生活相談センターからのアドバイスのキモであった。

  • 管理会社(代理人)だけでなく貸主本人にも書面を送る
  • 送る手段は書留で良い

請求書を送ってきた管理会社はあくまで代理人で、貸主本人の了承の元送ってきているのかはわからない。そもそも、今後話がこじれて民事調停や裁判となった場合、相手先は管理会社ではなく貸主である。そう考えると貸主にも書面を送付するのが効果的である、という理屈である。

また、ネット上では大家に対して内容証明郵便を送付することを勧める記事や、2万円ほどで契約書精査~内容証明郵便作成・送付を代行するサービスも見受けられる。しかし、消費生活相談センターからは「書留でも『送った』という証拠は残るし、効果はある」というアドバイスを受けた。確かに内容証明郵便は自力で作成したとしても少し料金が高い(2通送ると数千円になる)。簡易書留なら1通404円から送れるので、多少は費用を節約できる。

そこで、同一の書面を3通分作成し、1通は管理会社に、1通は(過去一度も直接連絡したことがない)貸主本人に書留で送付、残り1通は控えとして保管することとした。内容については少し悩んだが、以下の記事にある内容証明郵便のサンプルを手直しして使用した。

best-legal.jp

実際には、Google Docsで作成後、PDFで出力しネットプリント経由で3通分印刷した。言いたいことは伝わるだろうし、それっぽい見た目になったので、良しとした

f:id:karia:20211224050614p:plain
実際に送付した文面の一部

書面の末尾には「既に●×区消費生活相談センターに相談済であり、解決しないなら今後弁護士への相談も検討している」という旨を追記し、独断で送っているわけではないこと、今後法的手段の可能性も視野に入れていることを記載した。

結果

書留送付から数日後、管理会社から郵便が届いた。そこには以下のように書かれていた。

f:id:karia:20211224045333p:plain
管理会社から届いた書類(実物)

こちらの主張や妥当性などについては一切触れられず、「しょうがないので返してやる」という態度が見え透けているが、何はともあれこちらの納得のいく金額に減額できたこと、そして部分的であれ敷金が帰ってくることで気持ちが晴れ晴れとした。このあと、実際に要求通りの金額が振り込まれたことも確認し、一連の騒動は完結した。

とはいえ、書留の郵送費用や電話代、相談や調査に要した時間を考えると手放しでは喜べない。なにより、

  • 実際には吸っていないタバコを盾に原状回復費用を請求しようとした
  • 自分の都合のいいところだけ「ガイドラインに従っている」という理論武装をしてきた

という不動産屋の手口の悪質さが目立つ。借主側が何も知らなかったら、請求額を言われた通り支払ってしまっていたり、敷金が1円も戻らず泣き寝入りしていた可能性もある。このような不動産会社が減る事を願うばかりである。

最後にアドバイス

この記事を見ている同様に困っている人に向けてアドバイスをするとしたら、

  • 入居前に部屋にキズを発見したら必ず記録を取り、大家に控えを送る(※記録の取り方は東京都のガイドラインにフォーマットが載っている)
  • 退去立ち会いで事実と異なることを言われたらきちんと反論する
  • 高額の請求が来ても泣き寝入りせず、必ず内訳を精査し、納得しないまま支払わないようにする
  • トラブルのときの相談先はたくさんあるので、ダメ元で様々な窓口を頼る

といったあたりだろうか。トラブルにならないのが一番であるが、もしトラブルになっても頑張って敷金返還を目指してほしい。

今回の件、本当に様々な方にアドバイスをいただきました。本当にありがとうございました!!