オンラインでTRPGシナリオを遊ぶとき、必ずといっていいほど利用されているのが「ココフォリア」というツールだ。
ココフォリアを利用したTRPG用の部屋作成について、「この説明通り作ればどんなシナリオでも最低限の部屋ができる!」となることを目標に手順を書き出してみた。
(この記事には特定シナリオのネタバレはありません)
この記事の対象
この記事で対象とするのは、主としてBOOTHなどで販売している「クトゥルフ神話TRPG」「エモクロアTRPG」などTRPGシナリオの部屋作りだ。いわゆるボイセ(Discordなどを用いたオンラインでのボイスセッション)を対象とするので、テキセ(テキストセッション)では役に立たない可能性がある。また、PLとして一度はココフォリアを触ったことはあるという前提で説明を省略している箇所がある。
この手順をなぞって出来るのは本当に紙芝居レベルの部屋にはなるが、まずは一度作ってみることが大事だと思うので、初めて部屋を作る人の取っかかりになることを祈る。なお、ココフォリアは頻繁にバージョンアップが行われており、見た目や操作方法が変わることがあるので、がんばって読み替えてほしい。もし迷ったら公式ドキュメントを読もう。
部屋作成 基本編
まずは「これさえやればマジ最低限の部屋はできるよ」という、基本中の基本だけに絞って説明する。
シナリオ付属の素材確認
部屋作成の前に、シナリオに付属している素材を確認しよう。
よくあるのはNPCの立ち絵、イベントスチル、背景素材、情報アイコンなどの画像がシナリオ付属のzipファイルに入っていたり、有料素材として別売りしていたりする。有名シナリオになると有志が専用素材を配布していたり、作者の方がFANBOX特典として素材を配布しているケースもあるので、まずは「シナリオ名 素材」などで検索してみよう。
公式シナリオやpixiv小説でテキストのみ公開されている場合は、NPC立ち絵なども含めて全ての素材を自分で作成することとなる。
新規ルーム作成
確認が済んだらココフォリア上での作業に移ろう。まず最初にやることは「新規ルーム作成」だ。ココフォリアのアカウントを作成し、右下にある+ボタンを押すとルームが作成され、ルームの設定画面が表示される。
「ルーム名」は何かわかりやすい部屋名を入れる。自分の場合は、シナリオ名+セッションの日付を入れるようにしている。
「Dicebot」では、そのシナリオのシステム名を選択する。「クトゥルフ神話TRPG」「新クトゥルフ神話TRPG」「エモクロアTRPG」など。部屋作成後にダイスを振っても何も反応しないときは、Dicebotの選択が間違っている事があるので確認しよう。
NPCの立ち絵設定
部屋ができたら最初に、NPCの立ち絵を設定してみよう。
部屋右上にたくさんアイコンが並んでいると思うが、その中で一番左にある顔アイコンを押せば「マイキャラクター一覧」が表示される。+ボタンを押してキャラクター編集画面が出てきたらNPCの立ち絵を設定し、名前を入力しよう。後から変更できるので、立ち絵と名前以外は一旦無視してよい。NPCの立ち絵が表示されているだけでもテンションが上がるはずだ。
NPC画像がついてないときはどうすれば?
シナリオにNPC画像がついていない場合は、「それらしき画像をPicrewで生成する」「黒の人物シルエット素材を使う」などの手段がある。ただ、シナリオの雰囲気によってはそもそもNPCの立ち絵を一切表示せず、言葉だけで説明してしまうケースもある。
明らかなモブキャラにまで全員立ち絵を設定すると操作も大変になってくるので、慣れないうちは省略してしまおう。
NPCのステータスが細かく決まっている場合
CoCのシナリオでよくあるのだが、NPCのステータス(STRやDEXなど)がプレイヤーキャラクター同様に細かく決まっているケースがある。その場合、上記の手順でキャラクター作成すると入力項目が多く面倒だ。
そんなときは「いあきゃら」「Charaeno」などを利用してキャラクターシートを作成し、ココフォリアに貼り付けるほうがラクだ。チャットパレットなども(いつもPLとして遊ぶときと同じように)自動設定してくれるので、こちらの手段をオススメする。
なお、NPCのステータスはPLからは見えないようにすることができる。キャラクター編集画面を開き「ステータスを非公開にする」をONにしよう。ステータスが見えても構わないなら、そのままでいい。
背景サイズの決定
では次に背景画像を設定してみよう!と言いたいところなのだが、その前に背景のサイズ(解像度)を決定しよう。
ココフォリアでは背景サイズを自由に設定できるしズームも自由自在なのだが、あとからサイズを変更するのが非常に面倒なので、背景を設定し始める前にサイズを設定しておくのがベストだ。まず右下のえんぴつアイコンを押してみよう。
一番上の「前景・背景を変更」を押すと「フィールド設定」という画面が現れる。
この「フィールド設定」という画面に横幅・縦幅という設定項目があり、初期設定では40x30マスになっている。ココフォリアの1マスは24x24ピクセルの正方形なので、つまり背景は初期状態では4対3の比率になっている。画像の解像度に変換すると960x720ピクセルだ。
ただ、画像素材を漁っていて比率が4対3の画像素材なんてものはまず見かけない。何も考えずに縦横比率が異なる画像を背景として設定すると、以下の様に歪んで表示されてしまう。
時計が縦長に歪んでいるのがわかりやすいだろう。この画像は解像度が1280x800(16対10)なので、ココフォリアの設定も16対10になるように設定してやればきちんと表示される。
さて、ここまでの説明を読んで「画像に合わせて横幅・縦幅をいちいち設定するのはなんだか面倒だな……」と思い始めただろうか?そこで私は、最初にココフォリアのフィールド設定を『コレだ!』と決めてしまって、全ての画像の縦横比をそれに合うようにトリミングする、という手順にしている。よく使うフィールド設定は以下の2つだ。
ココフォリアの設定 | 実際の画像解像度 | 設定理由 |
---|---|---|
80x45 | 1920x1080 | シナリオ付属の画像がこのサイズであることが多い OBSで録画するとき16:9のほうが都合がよい |
75x50 | 1800x1200 | フリー写真素材の解像度の比率が3対2であることが多く、トリミングせずそのまま利用するため |
背景素材の設定
背景サイズを決めたところで、実際に背景設定をしていこう。
背景素材の設定は以下の様な流れとなる。ここでは実際にシナリオを読みながら進めていく必要がある。
- 右上のアイコンから「[GM] シーン一覧」(動画再生みたいなやつ)を選ぶ
- シーン一覧ウインドウが現れるので+を押して新しいシーンを作成する
- 右下のえんぴつアイコン→「前景・背景を変更」→「背景選択」「前景選択」のどちらかを選び、背景素材をドラッグ&ドロップし、クリックして選択する
- 「新しいシーン」と書かれているところをクリックし、シーン名としてシナリオの章タイトルやページ番号などを入力する
- 保存アイコンを押す
- 2~5の作業をシナリオ終了まで繰り返す
この手順のうち5番の「保存アイコンを押す」が非常に忘れやすい。うっかり保存アイコンを押し忘れたまま他のシーンに移動してしまうと、背景が設定されず消えてしまうので十分気をつけよう。
背景設定が完了したら、シーン一覧にはこんな風に設定した画像がサムネイルとして表示されているはずだ。画像サムネイルの部分をクリックすることで、他のシーンに移ることができる。やったね!
背景にどんな画像を使う?
背景画像として利用するのは、シナリオ付属のスチルや背景ががあるときはもちろんそれを利用するし、自分で作れるならそれに越したことはない。ただ、個人的にはなるべく場面にあった画像を細かく切り替えながら出していきたいので、フリー素材サイトを多用して作成している。
良く使うのは、権利表記なしでOKで、無料で何回でもダウンロードができる以下のサイトだ。
サイト名 | 特徴 |
---|---|
Pixabay | 写真素材の種類がめちゃくちゃ豊富、大抵のものは揃う、海外画像多め |
ぱくたそ | Pixabayにあんまりない日本の路上とかの写真素材を探すとき使う |
きまぐれアフター背景素材置き場 | 学校のイラスト素材がたくさんある、学園モノなら絶対ここ |
上記のほか以下の様な手も使う。
- 写真ACも会員登録すれば1日1回だけ無料DLすることができる。Pixabay以上に素材が大量にあり日本系素材も充実しているので、困ったとき最後の手段として利用する。
- 真っ黒または真っ白に塗り潰した画像をペイントなどで1枚作成しておく。サイズはなんでもよい。シーン暗転時などに絶対使う。
BGMの設定
NPCと背景素材の設定さえ終われば、もうこのままTRPGを遊ぶことも可能だろう。ただ、オンラインのTRPGではBGMは非常に重要な要素だ。各シーンにいい感じのBGMを設定していこう。
部屋の右上にある「BGM01」と書かれた部分をクリックするとBGM設定画面が現れる。
ここにMP3ファイルをアップロードし、表示されたファイル名をクリックすれば再生される。BGM設定画面を閉じたあと、シーン一覧にある保存アイコンを押す必要があるので忘れずに! これも非常によく忘れる。
ときどき、「背景画像は同じだが途中で(NPCのセリフ等に合わせて)BGMを変えたい」というシチュエーションが存在する。そういうときはシーンを+ボタンで複製し、新たに作成されたシーンを使って別のBGMを設定しよう。セッション中に手動でBGMを止めたり変えたりするのは手間なので、初心者のうちは1シーン1BGMになるようにしたほうが良い。
BGMはどこで探す?
BGMのダウンロード先は、DOVA-SYNDROMEを利用することが多い。
というか、DOVA-SYNDROMEでほぼ全てのシチュエーションに対応できるのではないかと思う。気になったBGMがあればたくさんダウンロードしておこう。ココフォリアのBGMは1ファイル10MBまでというサイズ制限があるので、ダウンロード時にファイルサイズをチェックする習慣をつけよう。
BGM選びは最終的にたくさん試聴してみるしかないので、実は背景設定以上に時間を使うことがある。どうしても迷ったときは、YouTube上にある配信セッションで使われているBGMと同じ物を探してみると良いかもしれない。スマホのGoogleアプリを使って配信の音を聞かせるとBGM名を当ててくれるので(YouTubeにある曲のみ)、そういうのを使ったりすることもある。
セッション当日の操作
ここまで完了したら部屋は完成だ!シーンを一番最初に戻してから、プレーヤーに部屋のURLを教えて招待しよう。当日セッション前にやることは以下の2つだ。
- 「マイキャラクター一覧」「 シーン一覧」を開いておく
- PLにキャラシからコマ貼り付けをしてもらう(開始前に、試しに適当なダイスを振ってみてもらおう!)
準備が整ったら、シナリオの進行にあわせて「シーン一覧」を上から順番にクリックして切り替えていく。そして、タイミングよく「マイキャラクター一覧」からNPCの画像を出したり消したりすればよい。簡単だね!
部屋作成 応用編
さて、本当に基礎編の内容だけを実践してシナリオを回してみると、きっと色々「こういうことがしたい」という気持ちがわいてくるはずだ。ここから先は応用編となる。
応用編では具体的な操作を書くと長くなってしまうので、機能の紹介にとどめておく。ここまでの操作ができていれば、触ってみればなんとなくわかると思う。
シナリオテキストの設定
セッション中に特定のテキストをルームチャットに貼り付けたいときがある。よくあるのが「プロローグやエピローグの文章」「情報タブに貼る資料(入手した手紙やメモの内容、探索可能場所の提示など)」などだ。
しかし、PDFシナリオはその場でコピペしようとするとスペースや改行が入ることがあり手間取ってしまう。そんなときのために、事前に「シナリオテキスト」にテキストを入れておくと便利だ。
スクリーンパネルの設定
セッション中場合に応じて出したい画像で、人物(NPC)以外のものは「スクリーンパネル」に設定する。
たとえば、いわゆる「ダンジョンの地図」や「情報アイコン」などがこれに当てはまる。「情報アイコン」というのは、マウスカーソルを当てるとシナリオ内の情報がテキストで表示されるアイコンのことを指してこう呼んでいる。
チャットに長文の情報を何度も送ると流れて見づらくなってしまうので、情報量の多いシナリオでは「情報アイコン」を多用すると整理がしやすくなる。アイコンは私の場合ICOOON MONOというサイトからダウンロードしている。このサイトのアイコンは好きな色に変更できるので、シナリオに合わせた色使いにしてみよう。
そのほか、「シナリオのロゴ」「部屋の装飾素材用の枠」「キャラクター配置用の枠」といった、シーンを問わず常時表示させておく系の画像もスクリーンパネルを使うことが多い。NPCも、ステータスがないモブキャラはスクリーンパネルを使って表示する流派の人もいる。本当に頻繁に使用する機能なので慣れ親しんでおこう。
マーカーパネルの設定
特定のシーンのみで表示したい画像で、表示するシーンが完全に決まっている画像は「マーカーパネル」に設定する。マーカーパネルは設定後にシーン一覧で保存アイコンを押さないと消えてしまうので注意すること。
よくやるのは、シナリオの進行度を表す「1日目」みたいな説明用の文字をマーカーパネルを使って配置し、シーンによって「2日目」「3日目」のように変えていく、という手法だ。ただ、そういったシーンの説明文字は背景画像にあらかじめ書き込んでおくという手もあり、人によってはそちらのほうが手間が少ないと感じられるかもしれない。スクリーンパネルを使っていい感じに手動切り替えすることも出来るので、どれが一番ラクなのか試行錯誤してみよう。
高度な技だが、マーカーパネルと「APNG」と呼ばれる動く素材を使ってシーン切り替え時にフェードイン・フェードアウトなどのエフェクトをさせることも可能だ。
効果音の設定
シーンに合わせて爆発音や警報音、スマホの着信音を流すとよりセッションが盛り上がる。効果音はループさせず1回鳴らすだけで終わらせるため、以下の様な設定を行う。
効果音のMP3ファイルをアップロードしたら、右側にあるえんぴつアイコンをクリックすると「音量」「ループ」の設定ができる。音量はデフォルトでは0.5になっているが、効果音は大きめにしたほうが聞こえやすい。ループはオフにしておこう。
ココフォリアには音を流すための機能として「BGM01」「BGM02」の2チャンネルが存在する。私の場合はBGM1を音楽(ループする素材)、BGM2を効果音(ループしない素材)という使い分けをすることで、音楽を流したまま同時に効果音を流せるようにしている。この使い分けはGM次第だ。
作成した部屋の使い回し
ここまでの手順でがんばって作成した部屋だが、別の人に同じシナリオを回すのであれば使い回ししたいと思うことだろう。作成済の部屋を使い回す方法としては、私が把握する限り以下の3つがある。
- 一度使用した部屋を手作業で新規作成同様に戻し、ルームログを削除する
- 部屋の複製機能を使う
- 部屋をzipファイルにエクスポートする
1番はココフォリアの無料バージョンで行える唯一の方法だ(もしかしたら最近追加されたセーブ&ロード機能でもう少しいい感じにできるかもしれない)。2番が最もラクで次点が3番なのだが、どちらもココフォリアPRO限定の機能なので、何度も同じシナリオを回す場合はおとなしく課金するのがよいだろう。
参考URL
かなり長文になってしまった。これでもココフォリアの全機能の半分も説明できていないと思うのだが、部屋作りの基礎中の基礎は把握できたのではないだろうか?
より詳しく知りたい人向けのURLをいくつか貼っておく。
この記事とは違う観点での解説だが、重なり優先度についての説明などかなり参考になる記事なので合わせて読むことをオススメする。
ものすごく情報が古いのだが、一通りの説明は揃っているので迷ったら読んでみると良いかもしれない。
「カタシロ」のネタバレが含まれるが、ココフォリアの部屋作成手順を動画で説明してくれている。「背景」機能を使用していないことなど本記事との流派の違いはあるが(部屋作りには様々な流派が存在する)、操作の参考にはなると思う。