夏から秋頃にかけて「ボイスチェンジャー流行ってるなぁ」とは思っていたんですけど、10月ごろにRoland VT-3/VT-4実機をちょっと触らせてもらいまして、あーなるほどこれは面白いねと。その後自宅環境でもちょっとお試ししてみたいなと思って環境構築のために記事を漁ってみると「高価な機材を買う前にまずは恋声で試してみよう!」と書かれているわけです。なにしろ恋声はフリーソフト。Windows環境さえあれば試せるわけでこれはお手軽ですね。
http://www.geocities.jp/moe_koigoe/koigoe/koigoe.html
というわけで、この恋声にWindowsマシン内蔵オンボードのサウンドカードとその辺に転がっていた指向性のない安マイクで試してみました。
……おっ、すごい、確かに自分の声が変換されてる!けど、何か変換がおかしいような気がするぞ?なんでだろう、原因を突き止めたい!
ここから、2ヶ月にわたる長い長い試行錯誤の旅が始まります。
※この記事に含まれる埋込動画は音量がまちまちのため、再生の際はボリュームに充分ご注意ください。あと、これ書いてるのは音関係素人なので、多少のツッコミどころはあるかもしれません。初心者の方は他の記事もよく調べてください!!
恋声のパラメーターを変えてみる
恋声にはざっくり言うと「フォルマント」「ピッチ」という2つのパラメーターがあります。この2つの値をデフォルト値から変更して最適な値を探すところからスタートする、という流れが大半の紹介記事の出だしなのですが、実際触ってみると「2つのパラメーターを操作していい感じにする」というのはなかなか良い落としどころが見つかりません。あと、私の環境ではそもそも変換品質以前と思われる3つの問題があり、
- 「サー」または「ギー」というノイズがかなり目立つ音量でずっと乗っている
- 不定期にプツッ……プツッと音声変換が途切れる
- 低い声がケロケロっとした声で変換されてしまうのが気になりすぎる
という状況でした。
喋りながら変換ボイスを聴いていると「おお~、変換されてる」という満足度が大きいのですが、後で録音した声を聞いてみると上記3つの問題のせいでずっと聞き続けるのは耳が辛い。どれから解決しようかと思って調べてみると、やはりノイズが乗っていると変換がおかしくなりやすいらしい、という情報を得ました。恋声のEffect機能でどうにかならないか試行錯誤してみたものの、良くなっているのかどうかがわからない。パラメーターもいっぱいあるし……。
マイクとサウンドデバイスを変えてみる
一旦パラメーターからは離れて、考え得る原因を挙げていきましょう。
ふむふむなるほど。でも普段はオンボードサウンドカードで困ってないし、いきなり投資するのはちょっとなぁ、ただ、マイクのみ更新するだけならボイチャとかでもしかして使い道はあるかもしれない……
と思って調べて見たら出てきたのがコイツ。

SONY エレクトレットコンデンサーマイクロホン PC/ゲーム用 PCV80U ECM-PCV80U
- 出版社/メーカー: ソニー(SONY)
- 発売日: 2011/10/10
- メディア: エレクトロニクス
- 購入: 32人 クリック: 127回
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全部解決できそう!3000円台?買いだ!!
欲しくなったらすぐにヨドバシ夜間受け取り窓口に凸!!
その結果どうなったかというと、
- 「サー」というノイズがずっと乗っている:オンボードより多少マシになった、しかしまだ目立つ
- 不定期にプツッ……プツッと変換が途切れる:あまり変わらず
- 低い声がケロケロっとした声で変換されてしまう:あまり変わらず
というわけで、ほんのちょっと改善したけれど根本的には解決せずでした。一応、オンボードのサウンドカードのノイズが凄いということだけは切り分けができた。
ウインドスクリーンを装着してみる
マイクを指向性ありにした影響で、自分の息がマイクにかかることによるノイズが無視できなくなってきました。これはレビューにも書いてあったので改善のためこちらを購入。

- 出版社/メーカー: キクタニ
- メディア: エレクトロニクス
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これを装着するとこのような見た目に。
これで自分の息による「ブオー」というノイズはほとんど乗らなくなりました。もしかしてこれでプツプツとしたノイズも一緒に改善されるかも?と思ったけれど効果なし。
ソフトを変えてみる
このあたりで、「恋声で全てを調整しようとするのは難しいのでは?」という発想に至りいそいそと検索。すると、「お主、恋声以外のボイチェン動画探してるんか?ホレホレ」というYouTube様のおせっかいにより次々とレコメンドが。はい、素直に拝聴します……(動画解説かなり分かりやすくて助かる)。
恋声とVSTプラグインの比較、そして導入方法まで。なるほどVSTプラグインというものがあるのか(繰り返しますがわたしは音関係に関しては素人です)。
設定値の詰め方(動画ではREAPERを利用するけど恋声にも応用可能)。そして、入力音声の周波数を表示してくれる!そうそう、これが欲しかったんだ!!
というわけで、VSTプラグインが使えるDAWソフトウェア、自分の場合はcakewalkを導入。
これにVSTプラグインを入れることで色々音声をイジれるらしい。なるほど~。
肝となるフォルマントとピッチの変換にはRoVeeまたはKeroVeeを使用。KeroVeeのほうが細かく設定できるけどちょっとわかりにくい。
ソフトウェア - KeroVee 1.61 | g200kg Music & Software
これで、自分の声の周波数を画面上で見つつピッチ・フォルマントの値を調整することができるようになりました。ノイズが消えたわけではないけど、どの周波数でノイズが発生しているのかが見えるようになり、また特定の周波数をカットするイコライザーもグラフを見つつ細かく設定できるようになりました。これはかなりの進歩だ!
ノイズリダクションを入れる
そんなこんなで、終わらないノイズ対策とパラメーター調整で試行錯誤していたある日、ふと気付きました。
ノイズってソフトウェア処理で消せないの?
ググってみたらあっさりVSTプラグインを発見。あるんじゃん!!!
ふむふむ、REAPERを使っていない場合は、ReaPlugsというVSTプラグインを入れればよいのね。
やってみました。サーノイズが綺麗さっぱり消えた!すごい!!
でも、当然の話なんですがボイスの音質も変わってしまいます。強くノイズリダクションをかけると「サ」行の発音が聞こえないレベルにまでなってしまいました。弱めにかけるのがポイントかな……。
まあとりあえず、ノイズはかなり抑えられて、ギリギリ聴けるんじゃないかなという感じに。ノイズが少ない箇所をピックアップして無理矢理音量を調整した音声ファイルもできたし、これどうしよう?
動画を作ってみる
そうだ、動画を作ってみよう!
動画作成については、「受肉期待age」というコメントと共にAmazonのウィッシュリストから送られてきたあの本が参考になりそうです。
そう、今話題沸騰のマシーナリーとも子著のVTuber本!とりあえず見てみましょう。

- 作者: マシーナリーとも子,リブロワークス
- 出版社/メーカー: 洋泉社
- 発売日: 2018/12/11
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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すると、動画編集に使っているソフトは「AviUtil」って書いてあるんですね。それ知ってる!昔CMカットするのに使ってた!!わかるわ~便利だよね~。
それはわかるけど、単に1枚絵と音声ファイルからサッと動画を生成したいだけなんだけどな。CLIとかで簡単に出来ないのかな?と思っていたら、なんとか出来ちゃいました。ffmpegなら1枚絵から動画が1コマンドで作れる!簡単!!最高!!!(ffmpeg自体が沼という話は置いといて)
こちらの記事を参考に、導きだされた動画生成コマンドは以下の通り。 -loop 1
と -shortest
のオプションがなかなか検索でうまく出てこなくって難儀したのよ。ありがとうクラスメソッドさん。
ffmpeg -y -loop 1 -r 30000/1001 -i building_bigsight.bmp -i c95voice.wav -vcodec libx264 -pix_fmt yuv420p -s 640x480 -shortest ./output.mp4
というわけで出来た動画がこちら。
ここまででやることやったのでは?という若干の達成感があったのですが、まだ音質に納得が行っていなかった(特に音声の音量が低く相対的にノイズが目立ってしまう)のと、「プツプツノイズ」問題がまだ解決していませんでした。これらの問題を解決するためには……そう、もうアイツしかない。
オーディオインターフェースを導入する
というわけで、
買っちった。
YAMAHA AG03。13965円。
だってAmazonサイバーマンデーとドコモのスーパーチャンスを合わせるとさぁ、ポイントが……(以下本題と関係無いので省略)

ヤマハ YAMAHA ウェブキャスティングミキサー 3チャンネル AG03
- 出版社/メーカー: ヤマハ(YAMAHA)
- 発売日: 2015/05/31
- メディア: エレクトロニクス
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AG03の良い所は色々ありますが、その1つがPCマイクがそのまま流用できるということ。なので今回買ったマイクも流用できます。試しにUSBオーディオボックスをやめAG03経由でPCのDAWへ入力にしてみたところ、やっとプツプツノイズとおさらばすることが出来ました。音量のGAINも調節できるようになり、適切な音量も本体ランプで表示してくれるようになり、さらにはASIOドライバの恩恵で遅延も小さめ。
やはり安USBオーディオボックスではダメかぁ、機材にはお金をかけないとダメだね!!!あれ、当初の目標と変わってきているような。大丈夫、まだVT-4には手を出していない!(タイトル回収)
……気を取り直して、それ以外の部分も見てみましょう。サーノイズはどうなったのか。
これがAG03導入前の様子。300Hz近辺を中心に、全体的にノイズもりもりですね。
AG03導入後。600Hz以上のノイズが殆ど消え去ったことがわかります。600Hz~100Hzあたりも、大部分は減少したように見える。ここから、AG03備え付けの「COMP/EQ」ボタンを押すことで更に音質が改善されます。ここまで違うのかー。
で、楽しくなってきたので、歌ってみました。惑星ループ。
これを自分で聞き返していると、だいぶ良い感じになったのでは?もっと遊べるのでは??と思えてきます。生配信もしたこと無いし、イコライザーの設定は全然弄ってないし、さらに言うと自室内にノイズが多い問題は解決していないし(自宅サーバーを撤去しない限り無理)、まだまだ研究は続きそう。ただ1回の研究が録音→再生→パラメーター弄り→録音のループなので、ちょっと触っているだけで3時間とか平気で食われるのが目下の悩み。どこかでキリをつけたいなー。
謝辞
このボイスチェンジ研究にあたっては、様々な記事および動画を参考にさせていただきました。この場をお借りしてお礼申し上げます。
- VT-3/VT-4を触らせてくれたみうゼノちゃん
- 様々な知見を公開して下さっている魔王マグロナちゃん
※マグロナちゃんのボイスアップデート系動画と雑談配信は参考になるお話がいっぱいなので、教えて君する前にアーカイブをちゃんと聞きましょう