SRE NEXT 2025の感想、注目セッション、そしてTalk NEXTについて
SRE NEXT 2025に参加してきました。

SRE NEXT 2024が現地初参加だったので、2年目になります。今年も特に面白かったセッションやスライドをピックアップしてご紹介したり感想を述べていきたいと思います。末尾にはアンカンファレンスなどの感想も。
目次!
面白かったセッション・スライド
見たセッション全部紹介しているとキリがないのと、スライドだけ後から読んだケースもあるので、特に印象に残ったものだけ紹介していきます。まだ全部読んでないのであとから追記する可能性もあります。
全セッションのスライドの一覧はこちらの記事からどうぞ。
1日目
SREへのサポートケースをAIに管理させる方法
3人しかないSRE(データエンジニア含む)に対し3ヶ月で327件の問い合わせがほかのエンジニアから寄せられてきており、一次受けをAIbotにさせるようにしたという事例紹介。窓口(コミュニケーションパス)が統一されるという意味でも良い取り組みだと思います。
ドキュメントを読めばわかるような問い合わせばかりなら、AIが対応してくれれば人間の対応数は減っていくはずなのだけれど、結果として問い合わせ件数や対応時間が減ってないのが面白い。問い合わせのハードルが下がったのか、元々そんな単純な問い合わせは少なかったのかが気になるところです。
SREチームの越境と対話〜どのようにしてイオンスマートテクノロジーは横軸運用チームの廃止に至ったか〜
「横軸運用チームの廃止」がパワーワードすぎて印象に残りやすいのだけど、その結果に至るまでの対話が大事だよという話。
対話の手法として、複数の書籍からそのステップが引用して示されていたのが印象的でした。今度読んでみたい。
とあるSREの博士「過程」
博士論文を仕上げるまでのストーリー、そしてそもそもどうして博士課程に進もうとしたのか。今後博士論文を書くときに参考になるかもしれません(その機会があれば)。
異世界の情報源(論文)いい……#srenext_a
— karia (@karia2nd) 2025年7月11日
論文ってSNSで全然バズらないよねということを指して「異世界」という表現が面白い。AI関係の論文なら、最近たまに驚き屋さんが紹介してるのは見かけるけどな〜。日本語のスライドとかブログになってないと参照されづらいのかもしれません(英語のPDF誰も読まない問題)。そういうブログとか論文紹介bot作ったら流行りそう。
〜『世界中の家族のこころのインフラ』を目指して”次の10年”へ〜 SREが導いたグローバルサービスの信頼性向上戦略とその舞台裏
サービスをグローバル展開するときに便利なAWSサービスがたくさん。事例として参考になる。「みてね」が海外展開していること自体このスライド見るまで知らなかったです。。。
世界中で展開するグローバルサービスになると、すべての通信でCDN(CloudFront)を通さないと経路が様々すぎて遅くなりそうなのは、逆向き(海外サービスを日本で使うとき)の実感としてもありますね。ほら、海外のサーバーから apt update する時とかさ……。
インフラ寄りSREの生存戦略
インフラの中でも簡単な作業、たとえばCI/CDの構築なんかはAIエージェントに取って変わられる分野であって、残るのは複雑な課題しかなくなってきていますよね、という前提はまあわかる。ではSREである自分はどうするか、という選択としてアプリケーション開発に異動したというのが意外性あって面白かった。
今回のSRE NEXTでは、全体を通してSREのネクストキャリアについての発表が多かった印象があります。AIの活用が進んできたことや界隈の成熟化(高齢化)が進んできたことが要因としてありそうですね。個人的に気になるのは、この先若い人どうやって育てるのということなんですが(この話は下段のアンカンファレンスの項目に続く)。
2日目
すみずみまで暖かく照らすあなたの太陽でありたい
おそらく資料の公開ないと思うんですが、2日目朝一発目はヨドバシカメラの方の発表でした。主に自社のプライベートクラウドについての発表なのですが、まず最初にプライベートクラウドの定義と分類から。ヨドバシで構築しているのはNIST SP 800-145,146の定義に基づくオンサイトプライベートクラウドですよと。後で調べたらIPAが日本語訳を出していたので読んでおくとよさそうですし、オンプレに毛が生えたやつをプライベートクラウドと呼んでる皆さんは見習ってほしいですね……。
驚き・共感ポイントは色々あったのですが、最も印象に残ったのは以下の話。
「会長・社長から常々言われているのが『いつ行っても開いているお店、いつ行っても欲しいモノが用意されてるお店、こういうお店が一番いいんだよ』という話をずっと社員にしています」「これを実現するのがECがリーチしやすい」「ヨドバシのサービスが当たり前に使える、インフラ化していくといったところが最強の信頼」「こういうものを作りたかったわけではなくて、商売としてきちんとやっていきましょうと、いうところでここに行き着いた」
これ別にヨドバシさんに限った話ではなく、SREの「Site Reliability」の根幹にあるべき概念だと思ってて、24時間365日サービスを提供し続けるために何ができるか?という前提をSREやインフラエンジニアとして常に持っておきたいですよね。そこが経営層の理念とも一致したというのはよい話だなと思います。
サイバーエージェントグループのSRE10年の歩みとAI時代の生存戦略
こちらは昨年Co-Chairもされていた柘植さんの発表。サイバーエージェントさんの様々な取り組みが紹介されていたのですが、「Difyを利用した技術ブログ執筆の効率化」というのが気になった。まずエンジニア界隈でDifyを活用している事例というのがあまり見かけず(エンジニアの皆さんはどうしてもClaude CodeやDevinが話題になりがち)、「箇条書きを与えるだけでNotionに技術ブログの記事ページが出てくる」という仕組みもインパクトある。
後半に出てきたSRE組織のAI活用レベル可視化も参考になります。これ引用させていただこう。

Lv5のAIチームにまで至れるのは何年後かわからんけど、Lv3~Lv4のところまではもうすぐそこまで来ている……気がするんだよなあ。
オンコール⼊⾨〜ページャーが鳴る前に、あなたが備えられること〜
オンコール対応のオンボーディングを、新規着任した自分自身で改善したという内容。
オンコール担当になるとき漠然とした不安がやってくるのは当然のことで、オンコール対応ってイレギュラーなケースが発生したときにやってくるものだからね(事前に予測できている事象はあらかじめ対応しろよって話なので)。しかしそこで「なんだか行ける気がしてきた」と感じられるまで整備していったのがすごい。
リアリティショックという単語は個人的に知らなかったので参考になりました。リアリティショック乗り越えて行きたい、圧倒的成長!!
セッション以外の話
ここからはセッション以外の話をいくつか。
アンカンファレンス
今回1日目と2日目の間にアンカンファレンス企画があり、いくつか用意されたテーマに沿って輪になって議論を行う企画があり、面白そうなので参加してみることにしました。
自分が選んだテーマは「SREとその組織類型」。

冒頭で「チャタムハウスルール」について説明があり、ざっくり言うと「議論の内容は自由に使用してもよいが所属の情報は持ち出してはならない」とのこと。そのルール自体はなるほど納得なのですが、お題的に具体的事例を出そうとするとどうしても所属の情報が前提として出てくる(例:●●という会社さんでは××のような組織になっている、これには▲▲のような背景がある)ので、議論した内容を持ち出すのもちょっと難しいなという感じでした。そもそも最適な組織って人数とか会社のステージによっても違いますしね。
そのような背景があり、また参加人数が多い割にサブチームに分割しなかったこともあって(他所のテーマではサブチームに分けていることを後から知った)、議論というよりはお題に沿って参加者それぞれの事例を紹介し合うといった感じの趣でした。他所のテーマとはかなり雰囲気違ったんじゃないかなあ。
追記:テーマ「オブザーバビリティ」の様子がブログに上がっていました!
とはいえ、様々な所属の方のお話が聞けたのは参考になりました。一つ特徴的だったのは、チームトポロジーで出てくる概念、たとえばEnabling Teamだとかコンウェイの法則とか、そういった単語はもはや「知ってて当然」ぐらいの勢いで登場してきました。事前に把握しておいてよかったですね。
あともう一つ、これの話をしておきたい。
アンカンファレンスでSREどう育成するかという話になったときに、「皆さんがSREになったきっかけにヒントがあるのでは」と言われて「自分がなったときと同じような感じにはしたくないですね」って返したのが今日の最大のハイライトだったかもしれない #srenext
— karia (@karia2nd) 2025年7月11日
インフラエンジニアとかSREの方って、とりあえず現場に放り込まれて炎上やら障害対応やらを乗り越えて育ってきたって方が多いんじゃないかなと思っていて、自分もその一人なので「自分と同じ育ち方を若い子にしてほしくない」という気持ちはかなり強いです。
じゃあどうやって若者を育てていけばいいんだろう?という部分に個人的課題意識があって、SREの次のステップとして何かを目指すとしても、まず後継者を育てていかないとSRE誰もいなくなるけどいいの?ただでさえ少ないのに?と、常々考えているところです。
「皆さんがSREになったきっかけに~」の発言をされた方は、前置きとして「自分がSREではないのですが」と仰っていてなるほどと思いました。育ってきた環境が違うのね。
長々と語ってしまいましたが、初めてのアンカンファレンス体験はなかなか刺激的で面白かったです。オフライン参加の醍醐味って他の人と会話ができることなので、こういう参加者同士で会話できる機会があってとても良かったと思います。まさにTalk NEXT!
スポンサーブース
今年もスタンプラリー集めながらスポンサーブース巡りしてました。まあ全部は集めきれなかったですが。
今回最も印象に残ったのがこちらのボード。皆さん思うところがあるのかプチバズってましたね。
SRE/インフラエンジニアとして働いて辛かった思い出に「コスト問題でAuroraからRDSに戻すことになった」っていうのがあって、「IO課金辛いよね…わかるよ…」っていう気持ちになった #srenext pic.twitter.com/j2ap5Upj5j
— karia (@karia2nd) 2025年7月12日
AWSが提供するAuroraを利用すると発生するI/O課金、確かに事前に予測しづらく思いがけない課金額になりがちなのは、私の実体験としても理解できます。ただ、コストが上昇する代わりに各種の運用利便性を享受できるのがAurora(を含む各種のマネージドサービス)だと思うので、課金額が上がったからといって「じゃあRDSに戻しましょう」という結論に至るのは、SREとしては辛さしかなさそうですね。現代ではAurora I/O Optimizedという概念も出てきているのでこのような悲劇はなくなるとよいのですが。
ちなみに自分は「嬉しかった思い出」のほうに付箋を貼りました。付箋が少ないほうに逆張りで貼りたくなるタイプ。
懇親会
1日目終わった時点で非公式な懇親会に飛び込みで参加させていただいたりしました。これがほんとのTalk NEXTだ(?)
Day1 お疲れした!! #srenext pic.twitter.com/YDVYG3aYkF
— 逆井(さかさい) (@k6s4i53rx) 2025年7月11日
今回は2日目に公式懇親会があり、同会場の20階に移動するとそこには提灯が!
懇親会おつかれさまでした〜#srenext pic.twitter.com/SmV3OpFbE8
— karia (@karia2nd) 2025年7月12日
入り口でいきなりウコン配布、開始時には鏡割り、Findyさんによる開発生産性ビールの提供などなどイベントもりだくさん。
#srenext
— karia (@karia2nd) 2025年7月12日
開発生産性ビール! pic.twitter.com/YXI2DexexH
会場が広かったこともありいろいろ動き回っていたのですが、空きっ腹だたったこともあってかアルコールの回りが早く、最後のほうすごい雑に人に話かけたり、名刺入れ落として拾ってもらったりとかしてました(ありがとうございました)。生産性向上……したか……?
昨年の記事はこちらからどうぞ。